住んでいるマンションを出ると、
「んっ?」

背後に何か視線を感じて周りを見回した。

特に何もない、いつもの光景である。

「気のせいかな…」

わたしは呟くと、会社へと足を向かわせた。

「おはようございまーす」

「あっ、蜜柑ちゃん!」

会社に入ると、わたしに気づいた宇大くんが駆け寄ってきた。

「どうしたの?」

そう声をかけたわたしに、
「ポストの中にこんなんが入っとったんやけど…」

宇大くんはそう言ってわたしに見せてきた。

2つに折られた紙を広げると、
「えっ、何これ?」

わたしは声をあげた。

『門谷義隆に関わるな』

明朝体ーーおそらくパソコンで書かれたものであろうーーの、感情のないその文字が書いてあった。