精悍なその顔が近づいてきたのと同時に、わたしは目を閉じた。

「ーーッ…」

お互いの唇が重なった。

それは自然に、本当に当然のように重なった。

長かったと言えば長かったし、短かったと言えば短かったような気もする。

ゆっくりと、丁寧に、まるでシールでも剥がすかのように唇が離れた。

目を開けると、高天原さんの顔が目の前にあった。

どうしてなのかはわからないけれど、彼から目をそらすことができなかった。

「ーー来生さん」

「ーーはい…」

高天原さんに名前を呼ばれたので返事をした。

「帰りましょうか?」

「そうですね…」

その問いかけに、わたしはうまく返事をすることができただろうか?