「近所にここのチェーン店がないものですから、久しぶりにきたのがとても嬉しくて」

そう言ったわたしに、
「わかります、少し遠くに行かないとないんですよね」

高天原さんは共感してくれたようだった。

「台湾カステラとか、わたしが最後に食べにきた時にはなかったな…」

タッチパネルの台湾カステラを指差したわたしに、
「最近流行ってますよね、台湾カステラとかカヌレとか」

高天原さんは言った。

「高天原さん、カヌレはフランスのお菓子です」

「ああ、そうでしたね」

わたしたちは一緒になって笑いあった。

「いっそのこと、思いきって全部頼んでみます?」

高天原さんはいたずらっ子のように笑った。

「えっ、全部ですか?」

嬉しいと言えば嬉しいけど。

「僕の奢りですから」

高天原さんはそう返事をした。