「ただ…」

「ただ?」

それに続く言葉を待っていたら、
「彼が21歳か22歳だった時に、母親が男を作って家を出たとかで」
と、高天原さんが言った。

「駆け落ち、ってことですか?」

わたしがそう聞き返したら、
「そのことを当時高校生だった妹さんから電話で聞かされたそうです。

門谷は高校進学を機に実家を出て、それ以来1度も実家に帰ってないと言うことなので」
と、高天原さんは言い返した。

「そんな昔に実家を出たんですか?」

「門谷は子供の頃から野球をやっていて、県外の強豪校からスカウトがあったからと言うことで県外への進学を選んだのだとか」

「ああ、なるほど…」

「自分よりも実力がある人が多かったと言うことからプロへの道は断念したそうなんですけどね」

高天原さんは車を止めた。