「あの魚」

「えっ?」

門谷さんが指差した方向に視線を向けると、
「あの魚、ずっと寝てますよね?」
と、言った。

「あー、そうですね」

返事をしたところで心臓がドキッ…と鳴った。

めちゃくちゃ近いんですけど!

門谷さんの端正な顔立ちが目の前にあったその事実に、わたしと彼の距離は近いんだと言うことに気づかされた。

と言うか、改めて本当に顔がいいな!

「人間みたいですね」

これ、よくよく考えてみると“デート”ですよね?

何の気なしに乗っちゃったけど、これって俗に言う“デート”になりますよね?

「あの、門谷さん」

水槽を見て回りながら、わたしは彼に声をかけた。

「何ですか?」

そう聞き返してきた門谷さんに、
「今までも、こんな風に女性と2人でお出かけしたことがあるんですか?」
と、わたしは聞いた。