世間は夏休みに入ったばかりと言うこともあるのか、それとも休みの日だからなのかはよくわからないけど、たくさんの人がいた。

電車に乗って向かった先は水族館だった。

「水族館なんて久しぶり」

最後に行ったのは大学生で、アザラシの赤ちゃんを見に行った時以来である。

「そうなんですか」

入場チケットを買ってきた門谷さんが戻ってきた。

わたしに買ったばかりのチケットを渡すと、
「あの、本当に出さなくてもよかったんですか?」
と、わたしはそれを受け取りながら聞いた。

先ほどチケットを買うためにカバンから財布を取り出そうとしたわたしに、門谷さんは自分が出すと言って止めてきたのだ。

「これくらいだったら俺がちゃんと払いますので。

あなたには1円も出させるつもりはありませんから」

…何ですか、それは。