何かよくわからないけど、ピンチは免れたみたいだ。

門谷さんのおかげ…と言うのが気にくわないけど。

「改めて、助けてくれてありがとうございました」

もう1度門谷さんにお礼を言って彼から離れようとしたら、
「待て」

門谷さんに腕をつかまれて止められた。

「な、何ですか?」

わたし、あなたから離れたいんですけど。

そう思っていたら、
「礼なら躰で払え」
と、門谷さんが言った。

「はあ!?」

今、訳わからないことを言いましたよね!?

言ってる意味が全然わからないんですけど!

門谷さんはニヤリと口角をあげたかと思ったら、わたしを壁際に追いつめてきた。

トン…と、わたしの顔の横に彼の手が置かれる。

あっ、“壁ドン”だ…って、違う違う!

「ちゃんと払ってもらいましょうか」

近づいてきたその顔に、わたしは何も言えなかった。