久しぶりにいろんな人のことを思い出した。
思い出してはいけないとばかり心のどこかで思っていたみたい。
少しだけ懐かしくなって、目を細める。
「会いたいな」
蓮に、瑞樹、佐々木さん。
あたしの会いたい人は、大体遠くてもう2度と会えない場所か、どこにいるかも分からない人。
でも、ひとりだけ。
会おうと思えば会える人がいるじゃない。
「蓮にかよ」
琢磨がしらっとした顔をこちらに向ける。
そんな顔に、あたしは首を振った。
「ううん。…いいえ、あいたいは会いたいけど、叶わないことは願わない趣味なの」
「知ってる。だから、蓮じゃねえだろうなって思った」
「ふふ。よく分かってるのね」
あたしは、割と現実主義なのである。
だから、いつまでも夢を見続けたりしないし、前を向くの。
「じゃ、誰だよ」
不思議そうな顔をする琢磨に、あたしは笑って答えを教えてあげた。
「綾よ」
かっと、琢磨の目の奥が燃えたあたり。
決して、裏切ったことを許してなどいないのだと悟った。
琢磨みたいな人は多いのかもしれない。
獅獣を大切に思えば思うほど。
綾のした行為を許すことなんかできないのだろう。
だけどね、琢磨。
最後の最後で、ちゃんと裏切らなかった彼のことを。
あたしは、信用しているの。



