「じゃ、言ってみろよ。どうせ、覚えてねえんだろうけどさ」
という彼の苛立ちを感じ取ったが。
「…ひとりで8人やっつけたとか?」
「全然覚えてねえじゃねえか」
うん、ごめんね。
聞いた覚えはあるんだけど、何せ興味がなくて。
とか言うと、怒られそうなので、あたしはダンマリを決め込んだ。
「それなのに、今じゃ全然威厳ないのね」
「俺の話覚えてねえくせに無視した挙句にディスるんじゃねえよ」
「いや、仁みたいに尊敬もされてないし」
奥にいる仁は、今は稽古をつけてあげているらしい。
したっぱくんたちが何度も仁に挑んでいるけど、彼に敵うはずなく、地面に何度も転がっていた。
彼は、一気に複数人を相手している。
仁が不利なのは、きっと言うまでもないだろう。
それなのに、いとも簡単に相手の動きを読みきっているあたり、さすがとしか言えない。
素手なのに、この強さ。
野獣との呼び名がつくのも頷ける。
そんな仁をぼんやりと2人で見つめながら、琢磨はぽつりと呟いた。
「尊敬はねえな」
「なんで?」
「俺たちの代で一度獅獣を終わらせちまったからなあ」



