時折、恐ろしい夢を見る。
何もかも、全てがこの手からなくなってしまう夢を。
『さよなら、仁』
お前が、消えてしまう夢を。
「……仁?どうしたの」
相当唸っていたのだろう、それこそ和佳菜を夜中に起こしてしまうほどに。
和佳菜が俺を揺さぶり起こしてしまうほどに。
「すごい汗よ。何かあったの?」
普段汗はそこまでかかないほうであることを和佳菜も分かっているため、また心配させてしまっている。
俺が怖い夢を見たせいで、汗をかいているなんて知ったら、この子は笑うだろうか。
そんなことはないの、笑い飛ばすのだろうか。
それとも、心配してくれるのだろうか。
怖かったねと寄り添ってくれるのだろうか。
分からない。
想像なんかできやしない。
それでも、和佳菜なら俺にはない答えをくれる気がした。



