申し訳ない、拓生くんに。

 そう思っていると。
 拓生くんは言った。
『違う』と。


 また何か言ってしまったのか、まずいことを。


「違うんだ……
 ごめん……結菜ちゃん……」


 言ってしまったのではないか。
 何かまずいことを。

 そう思い心配していると。
 拓生くんが謝った、申し訳なさそうに。


「どうしたの、拓生くん。
 なんで謝るの?」


 驚いた。
 そんな拓生くんに。


 何もしていない、拓生くんは。

 それなのに。


「……噓なんだ」


「え?」


「相談したいことがあるなんて……」


 驚いた。
 拓生くんの言葉を聞いて。





 聞き間違い、ではない。

 確かに言った、拓生くんは。
『噓』だと。



 なぜ拓生くんが噓をついたのか。


 拓生くんのことだから何もないのに噓をつくはずがない。

 きっと何か理由がある。


「結菜ちゃんを俺の家に連れて行きたくて噓をついたんだ」


 あった、やっぱり。
 拓生くんが噓をついた。
 その理由が。



 わかった、理由は。

 だけど。
 なぜ拓生くんは思ったのだろう。
 噓をついてまで連れて行きたい。
 拓生くんの家に私のことを。


 今までは噓をつかなくても誘ってくれていた。
 私のことを家に。

 それなのに。
 なぜ今日は噓をついたのだろう。


「結菜ちゃんに会いたくて。
 結菜ちゃんと話がしたくて」


 なぜ今日は噓をついたのか。
 そんな拓生くんの考えや思い。
 それらのことを考えている。

 そのとき。
 拓生くんの噓。
 その理由を話してくれた、拓生くんが。





『会いたくて』
『話がしたくて』

 拓生くんが言った、それらの言葉。
 伝わってくる、ものすごく。



 噓をつく。
 そこまでして会いたい、私に。

 そう思ってくれている、拓生くんは。


 そんな拓生くんの想い。
 感じる、辛いくらいに。


「この前のテスト勉強も結菜ちゃんと一緒にできなかったし、
 最近、結菜ちゃんと会う機会がなかなかなかったから」


 確かに。
 拓生くんの言った通り。
 最近、拓生くんと話をする機会はなかった。


「……噓……だったんでしょ……?」


「え?」


 驚いた。
 拓生くんの言葉に。


『噓だった』

 それは。
 何のこと?