「やっだー、佐伯くん、本当にグループ長なんだ」

遠慮なくバシバシと肩を叩くなぎさに秀人は顔をしかめる。

「ああ、久しぶり。そういえば結婚したんだって?おめでとう」

「ありがとう!同期で結婚してないの佐伯くんだけだよ。その代わり、出世してるのも佐伯くんだけだけどね」

「たまたまだよ。橘さんと仲いいんだ?」

「そう、庶務仲間で仲良しだよ。和花ちゃん良い子でしょー?」

自分のことのように胸を張るなぎさ。秀人は奥のキャビネットで真面目に探し物をしている和花を見やる。

「ああ、一生懸命頑張ってるね。仕事も丁寧で早い」

「うんうん、私もついつい和花ちゃんを頼っちゃうんだよね。でさ、佐伯くん。これ」

目の前に差し出される封筒を受け取り中を確認する。

「招待状?」

「そう、今度小さなパーティーするのよ。私結婚式してないからさ、その代わりっていうか。よかったら来てくれない?」

「ぜひ参加させてもらうよ」

「ありがとう!でさ、お願いがあるんだけど。和花ちゃん一緒に連れてきてくれないかな?」

「え?俺が?」

「和花ちゃん訳ありでさ、一人でだと来てくれないわけ」

「……訳ありって?」

秀人は先日のエレベーターから降りてきた青白い顔の和花を思い浮かべた。誰かと二人きりになることが苦手だと言っているし、エレベーターに乗るのも苦痛そうだ。誰かが付いていてあげないと心配なのだろうか。

「ここだけの話だけど、男の人が苦手みたい」

「いや、大野さん」

「結婚して富田になりました」

「ああ、ごめん、富田さん。俺も男だよ?」

「知ってるよ。だって和花ちゃんが”新しいチーム長ったら超優しいんですぅ”って目をキラキラさせて言ってたからさ。信頼されてるじゃん」

秀人は頭を抱えそうになった。例え和花がそんなニュアンスのことを言ったとしても、なぎさの言いかたは大分誇張されている気がしたのだ。