秀人の歓迎会が駅ビルにある居酒屋で行われた。林部は機嫌よく秀人のことを自分のことのように自慢する。

「いやー、佐伯くんが来てくれてうちのチームも安泰だよ」

「ご期待に添えるように頑張ります」

「頼もしいねえ。それにしても佐伯くん、畑違いの仕事だったけど、よく私のオファーを受けてくれたね」

「そうですね、お声がかかったときはさすがに驚きました」

「そういえばあの日は大変だったね。まあ、ある意味縁があったのかな?」

しみじみと語る林部に、秀人はぼんやりとあの日のことを思い出す。林部の言う“あの日”とは、林部が秀人に一度部署に来てみないかと打診し、それを受けて秀人が林部の元を訪ねた日のことを指している。

あの日、林部の所へ行く途中、青白く震えて動けなくなっている和花に出会った。林部との約束の時間は迫っていたが、症状が症状なだけに秀人はそのまま放ってはおけなかった。