「二人きりになるのは苦手なんですね?今は大丈夫ですか?」

「はい、何というか、特に個室で二人きりに
なることに抵抗があるというか……苦手です。すみません」

「いえ、謝ることはありません。会議室は入れませんか?」

「入れないことはないです。一人なら大丈夫ですし。ただやっぱり何というか怖い気持ちがありまして……」

「わかりました。そういうこともありますよね」

和花が理由を言い終わらないうちに、秀人は納得したように同調した。

「ではこれで面談を終わりますが、他に何かありますか?」

「いえ……」

「ではありがとうございました」

佐伯は立ち上がる。

「あのっ」

和花が呼び止め、秀人は再び和花の横に腰を下ろし向かい合った。

「何かありますか?」

「はい、あの、その、佐伯さんは覚えていらっしゃらないかもしれませんがその節はお世話になりました」

緊張しながら一息に言うと和花はペコリと頭を下げる。秀人があの時のことを覚えていなくともお礼だけは言いたいと思っていた。あの時助けてもらったことは“通りすがりの王子様”として和花の中で頑張る勇気に変わっていたからだ。

「……とても驚きましたし心配しましたけど、元気な姿を見ることができてほっとしています」

優しい眼差しはまたしても和花に勇気をもたらす。秀人も覚えていてくれて心配もしてくれていたことに、和花はまた胸がぎゅっとなった。