「ごめんなさい、キッチン勝手に借りちゃいました」

「それは構わないけど……」

「朝ごはん、一緒に食べましょう」


 テーブルには、彼女が準備してくれた朝食が並ぶ。


「簡単なものしかできなかったけど……」


 元々、食材を揃えていなかったので、あったもので作ってくれたのだろう。

 美味しそうなコーヒー、サラダ、ベーコンエッグ、トーストが食卓並ぶ。


 誰かと一緒に朝を迎えて、用意してくれた食事を共にするのはいつもと違って、なんだか新鮮だった。


「ねえ」と、彼女の方から切り出した。


「しばらく、ここに居てもいい?」

「僕は別にいいけど……」


 いいのか?
 男の一人暮らしの家に居座るなんて。

 いや、よくないだろ。

 我に返って思い直した。



「実は私、帰る場所がなくて」

「帰る場所がない?」


……そんなことある?


「次の部屋が見つかるまでの間だけでいいから」

「まあ、そういうことなら……」


 同意の上なら、問題ないよな?そう思って、承諾した。


「ありがとう!」


 そんな屈託のない笑顔を向けられたら、余計に邪険には扱えない。