家でも学校でも居場所がない結雨は生に無頓着だった。

そのせいだろうか…、蛇行運転をするトラックを見てもその場から動かなかったのは。



キキーッ!!!



「そこの君!危ないっ!!!」


ーーードンッ!!!!


誰かが叫んだが、時すでに遅し。


鈍い音が響く。



女性の悲鳴や、人々の騒ぎ声、色々な声が聞こえた。


トラックの運転手もようやく正気を取り戻したのか、急いで運転席から降りた。


「…!?

青年がいないっ!」


そこには誰もいなかった。


確かに轢いたはずなのに、血を流して倒れているはずの結雨がいなかったのだ。


ペシャンコに潰れたトラックの前方部分だけが現場には残っていた。