幸せそうな二人を見て、もう僕が入り込む隙間なんてないんだと知った。紫水圭はそれを僕に教えるために、わざと診察室の中に呼んだんだ。

診察室を出て病院の廊下を歩く。心が、体が、何もかもが、重たい。片想いの期間が長すぎたから、心が現実を受け止めきれなくて、こんな場所なのに泣いてしまいそうになる。

「ねえ、若菜の幼なじみくん」

泣きそうになるのを堪えていると、意地悪な声が聞こえてくる。振り向けば、いつから僕のあとをつけていたのか、紫水圭が立っていた。その勝ち誇った顔を見ていると気になっていたことを思い出し、訊ねる。

「何で若菜が僕の家にいるってわかったの?」

「GPSを若菜の体に埋め込んであるんだ。だから若菜が世界中どこに連れ去られても居場所がわかる」

誤魔化すこともせず、紫水圭は教えてくれた。若菜を監禁していたというのは間違いじゃなさそうだ。

「どうして僕を追ってきたの?」

「君に頼みたいことがあるから」