水泳部員は何も百合絵と茨だけでは無い。

他の一年+桜がそこそこ期待出来る素質の持ち主だった事もあり、黒酉直々に二人は今日付けで戦力外通告を受けた。

「やっと辞められる」と、一瞬ホッとしたのも束の間、代わりにマネージャーとしての活動を余儀無くされた。

まぁ、屋外プールオンリーの上、冬でも寒中水泳をやるらしいので、救われたと言えば救われたのかもしれない。

ただ、黒酉の事だ。

何をやらされるか分からない。

具体的な説明も受けないまま、ベンチに座って待たされている二人には、この上無い恐怖であった。

さっきから途切れる事なく歯をカチカチ鳴らしているのは、寒さだけでは無く、怯えているからである。

「あ、先生来た。」

桜がそう告げると、百合絵と茨はほぼ同時にビクリと肩を揺らして動きが止まる。

危うく心拍も停止するところだ。

「じゃあ私戻るね。二人共頑張って!」

御愁傷様と言わんばかりの表情を浮かべ、気休めの言葉をかけると、桜はサッコラプールサイドへと消えていった。

二人の心の中では「薄情者~!」という言葉が虚しく響いた。