茨ちゃんは勘違い

廊下で殴られた箇所を抑え、悶絶する茨に対し、これっぽっちも罪悪感を感じていない黒酉は、近付いてこう言い捨てた。

「理解ったな?『理解』と書いて、理解ったな?ならば去れ。帰れ。」

相も変わらず教師としてどうかと思う発言のオンパレードだ。

ドMには堪らないのかもしれないが。

茨は、

「平気…こんなの平気!茨、負けない!」

と、無理矢理自分に言い聞かせ、黒酉の横を素通りし、西谷の前に再び立った。

黒酉は片眉をピクリと持ち上げ、背を向ける茨に低い声で問い掛ける。

「小娘。貴様、私の話を聞いて無かったのか?帰れと言っている。」

それには答えず、命令された訳でも無いのに茨は挙手をした。

「はいっ!」
「…は?」

意味不明な威勢の良い声を上げる茨に、思わず西谷は目が点になる。

「校長先生!アタシ、先生に質問があります!」
「何だね?言ってみなさい。」

西谷がそう促すと、茨はニンマリ笑い、甘ったるい声色を使った。

「先生には~…付き合っている人or好きな人居ますかっ!?……キャッ言っちゃった茨嬉し恥ずかし乙女」



グシャっ!!!



茨が頬を染めながら言い放った気色の悪い発言は、鈍い音と共にそこで途切れた。