茨ちゃんは勘違い

それは兎も角、忠告に対しての返事を待つ西谷だったが、いつまで経っても茨が言葉を発するどころか微動だにしないので、黒酉と顔を見合わせた。

黒酉は、取り敢えず茨の脳天を「パッチーん」と景気の良い音がするぐらい一発引っ叩くと、例の如く鬼教官的に促した。

「聞いていたのか貴様。ウンとかスンとか言え。」

痛さのあまり、頭を擦る茨は、その言葉にハッとした。

「あ?え?あぁ…喋っていいのか…なーんだ♪」

どうやら先の命令を忠実に守っていただけらしい。

黒酉はチッと舌打ちした後、茨に冷視線を浴びせた。

それを見て慌てて茨が、頭を下げる。

「あわわわわ…す、すみませんでしたぁ…もうしませぇん…」

茨にしては、まぁ上出来。

しかしこれでもイラっと来る。

西谷校長は再び溜め息を静かに吐くと、茨の方を見て言った。

「…まぁいいだろう。教室に戻りなさい。」
「やりっ♪」

解放された喜びのあまり、思わずガッツポーズを取る茨だったが、綺麗に頬を抉る黒酉の左フックがそれを許さない。



ズボッ!!



「ふぅぉっとぺっぷぁぁぁあぁぁぁっ!!?」



どがしゃーん!



茨はその勢いで校長室の外まで出ていった。