茨ちゃんは勘違い

軽く俯き、ほぅっと溜め息を吐くと、西谷は茨にこう告げた。

「城山君。こんな事は本校始まって以来の珍事だ。その意味を理解しているのかい?」

珍事とはそう、例の一件で百合絵にシバかれた際に、誤って非常ベルを押した事だ。

鳴り響く警報に、温室で育った生徒達はパニックパニック。

教師達が、茨の仕業だと気付き、事態を収拾するのに二時間かかった。

元はといえば、百合絵の豪快な水平膝蹴りのせいなのだが、茨の自業自得なところもあるので、細かくここでは突っ込まない。

「分かっていると思うが、我が校の規律が守れない者は厳正に処分する事になっている。今回は新入生で初回という事だから、反省文の提出のみでいいが、次回は謹慎・停学処分も辞さないからね。いいね?」

机の上で指を組みながら、真剣な眼差しで告げる西谷。

校長=ハゲor爺という公式先入観が刷り込まれている一般人からは、どう見ても教育者のトップというより、大手企業やり手営業か、ホストにしか見えない。

この男だけ、馬鹿馬鹿しいこの物語に合っていない気がするのは、著者だけなのだろうか。