茨ちゃんは勘違い

無理も無い。

常人なら耐え難い屈辱を受けたのに、今まで石ころに躓いた事すら無い男が受け止めるには重すぎる内容だ。

見事な開脚後転により、教室で大の字になって失神している甲斐を見た茨は、不思議そうな顔をして呟いた。

「んー?甲斐ちゃん、どったの??」

小首を傾げた茨…という表現が適切では無いかもしれないが、まぁ一般的に疑問符が頭上に浮かぶ様を表現するには、世紀末不細工用の類語辞典を持ち合わせていないので勘弁して欲しい。

兎も角、茨にとって「虫けらを潰すように当たり前」の行動は、甲斐へ女性に対するトラウマを与え、それまでの見方を変えた。

シンとなった教室を一瞥すると、茨はポンっと手を打ち、

「いっけな~い!!HR始まっちゃう!続きはまた後でにしよっんじゃ!」

シュタ!と、手を上げスタコラ教室から出ていった。

…。

……。

………。

僅か数分の出来事。

しかし、二年D組の生徒によって、後日この事件は学校中に広められた。

『タイフーンIBARA上陸事件』

…と。