茨ちゃんは勘違い

「うわあああぁあああぁぁあああぁぁぁっ!!!!甲斐が、甲斐が振られた!!振られちまった!!!」
「ありえねぇええぇぇぇっ!!!」
「一体何が起こったの!?今!!」
「信じられん…俺は夢を見ているのか…」
「あの…『桐海のキング』が…『キング木更津』が…」

男子女子問わず、まるで蜂の巣をつついたような、地震前に大移動をする小動物達のような、都会のど真ん中でテロが起きたように大騒ぎした。

「あら?そんなにビックリ?アタシ普通だけど」

と、一人大事件を起こした張本人であるにも拘わらず、ケロリと茨が言う。

「あ、あなた…自分が何をしでかしたのか分かって言ってるの?」
「んーん。全然。全く。」

女子の一人が恐る恐る茨に問い掛けると、茨は三歳児のお子ちゃまみたいに首をブンブン振る仕草をした。

「お、お前は、この学園で三本の指に入るモテ男を振ったんだよ」
「へぇ。三本の指に入るモテ男。何それ、おいしいの?」
「こ、こいつは…」

違う…こいつはタダ者じゃない…。

軽くトリップしている甲斐を除く全員が、茨について、ようやく察知した。