茨ちゃんは勘違い

「付き合ってあげたいのはヤマヤマなんだけど、アナタとアタシじゃ釣り合わないのだから潔く諦めてねごめんちょ」

…。

……。

………。

一瞬、甲斐は何を言われたか理解出来なかった。

甲斐という男は、今の今まで壁にもぶち当たらず、順調満帆な人生だった。

勉強は予習なんかしなくても、テストで高得点を叩き出しまくり、その類い稀な運動神経で、あらゆる部活から引っ張りだこ、黙ってても友達と彼女は無数に出来たし、傷一つ付いていない経歴だった。

女を振った事はあれど、振られた事なんて無い。

今回のラブレター投函も、完璧過ぎる自分に刺激を与えようと、遊びでやったつもりだった。

なのに何故?

宛先で無い人物、それも見覚えすらない茨に、一方的に突き放された形になったのか…。

まだ頭の中で整理のつかない状態で、甲斐は口を開いた。

「は?え?は?ん?あれ?あれれ?あれあれあれ?おかしくない?何かおかしくない?あはは、おかしいよね?」

無理に笑顔を作って、平静を装おうとする甲斐だったが、見事に口の端が引きつっている。

軽く壊れた発言をしている甲斐に、茨が応えようとすると、それまで黙っていたクラスメイト達が次々に喚きだした。