茨ちゃんは勘違い

 マナーモードにしている携帯は、テーブルの上で振動音だけを百合絵に伝えている。
 百合絵はけだるそうに携帯を手に取ると、液晶を覗き込む。
 携帯は木更津甲斐の名前を表示し、怪訝な顔をした百合絵だったが、応答ボタンに触れた。
「……もしもし」
”もしもし白石さん!? た、大変なんだ!”
「……何が?」
”茨ちゃんが、トイレに入ったっきり、出てこなくなったんだ!”
 プツ。
 プープープー……。
 百合絵は即座に携帯の通話を切ると、そのままベットに顔を埋めた。