茨ちゃんは勘違い

「馬鹿が」
「ひぃ!?はいっ!?」

黒酉は歯茎を出しながら舌打ちをすると、眉と鼻の間にあらん限りの皺と皺を集めて、鋭い眼光を百合絵に向けた。

「なんだこのスペースは。無駄だ。他に荷物もある。詰めろ」
「はははははいっ!!」

黒酉にベンチをチョイチョイ指で差されると、百合絵は言われた通りに詰め、黒酉に接近した。

肩と肩がこれでもかというぐらい密着する。

黒酉は先程よりも盛大に舌打ちすると、今度は見もせずに言った。

「……近ぇ」
「すすすすすみません! すみません!」

百合絵はマジで帰りたいと思った。