茨ちゃんは勘違い

「そ、そんなに引かないで下さい...本当に冗談なんです、ほんの出来心だったんです、生まれてきてごめんなさい、存在しててごめんなさい、消える事が出来るならば消滅してしまいたいです」

最初の謝罪から段々と卑屈に、自虐的になっていくマエケンに客は更に静かになる。

静寂が支配して、数分後。

業を煮やしたバスの運転手が、なんとなくエンジンを吹かす。

車体の振動音がその場の空気を破ると、マエケンはハッとした様子で笑顔を作った。

「はい！そんな訳で、ライオンにお肉をあげてみましょう！」

明らかにさっきより沈んだ空気の中、客達にステンレス・バスケットに入った「何かの肉」が配られた。