茨ちゃんは勘違い

女子三人と人外一匹と木更津は、壊れたCDプレーヤーのように同じ言葉を繰り返す安部を放置し、微妙に距離を取った。

仕方無い……仕方の無い事である。

それまで口数少なく様子を見ていた茨は、木更津の方を見るとこう訊いた。

「じゃあ、貴方が助けてくれたの?」
「そうだよ」

ニコリと微笑む木更津。

しかし、それに対し複雑な表情を浮かべ、茨はこう切り出した。

「訊いていい?」
「なんだい?」

茨の身体がプルリと少し震えた。

「もしかして……もしかすると……人工呼吸ってヤツをしてくれちゃったりした?」

ガキン、と女子三人の動きが固まる。

(な、何故に──!?)
(ど直球で訊いた──!)
(てか、意識あったのか──!)

なんともオゾマシイ……いや、素敵な救出劇が、三人の脳裏に甦る。

一方、茨の問いに動じる事なく、一層深い笑顔で木更津は答えた。

「救命処置をしたまでだよ」

覗く白い歯がキラリと光る。

女子三人、今度は耳を疑った。

(満面の笑顔で──)
(恥じらう事なく──)
(言いやがったぁぁあぁぁぁっ!!!)