「優希に見せてやりたいって思った空を撮ったら、わかるのかもしれないって。でも声をかけずにいなくなったことは悪かった。申し訳ありません」
「確かに、最近の作品はあなたらしくない。このままでいいのかは懸念事項でもありました。理解します。でも、今後は勝手に行動せず、ちゃんと話してください。そのために俺たちはいるんですから」

 Allyもケイトも何かを作り上げる人たちを尊敬し、そのサポートに全力で立ち向かおうとしてる。

「あなただけを悩ませてしまったこと、俺たちも反省しています。一人で抱え込ませてごめんなさい」

 頭を下げたケイト。禄朗は慌てたように立ち上がった。

「やめろって、そういうの……!お前に頭を下げさせたいわけじゃなかった。今度からちゃんと話すから……」

 さすがの禄朗もケイトには弱いらしい。

 優希はその様子を見て、安堵する気持ちに包まれていた。禄朗には素晴らしいサポートがついている。彼らがいてくれたら、この先も大丈夫だと思える。

 そんな関係が羨ましいと思った。優希には入っていけない世界がここにあって、信頼しあえる関係には入っていけないから。ひとりだけ外れた場所にいるようでさみしい。

 「優希」とケイトは優しいまなざしを向けて微笑んだ。

「ありがとうございます。あなただから探せたんですね」
「い、いえ、ぼくは。Allyががんばってくれたから……」

 毎日慣れない長距離を運転するのはかなり疲れただろう。帰りの車で禄朗と運転を変わったAllyは、一瞬で眠りに落ちていた。

「Allyもお疲れさまでした。ありがとう」

 それを受けてケイトがお礼を伝えるとAllyは嬉しそうに笑った後、一瞬だけ複雑そうな表情を浮かべ「これで償いになれたかわからないけど」と呟く。

「償い?」

 ケイトが問いかけると、言い淀みふるふると首を振る。訝しげにしながらもケイトは話を変えた。

「ところでこれから優希はどうする予定ですか?」

 聞かれて優希は口ごもる。

 せっかく禄朗と会えたけど、有休も使い果たしてしまうし日本に戻らなきゃいけないだろう。だけど叶うならこのまま一緒にいたい。もう離れたくない。
 
 どう答えていいのか迷っていると、ぎゅっと手を握られた。禄朗の大きな手が優希をしっかりとつかんでいる。

「このままいればいい」

 迷いのない声だった。