「すみません。甘えっぱなしで、部屋まで散らかして……」
「気にしないで。リラックスしてくれたら一番うれしいですよ」

 お邪魔します、と小さく言ってからケイトは部屋の中へ足を踏み入れた。広げた星空の写真を一枚一枚目を通し「いい写真ですね」と微笑んだ。

「これは初期の写真?すごく優しい。今はもっと冷たい感じがします」
「そうですね。まだ写真家に憧れていたころの写真です」

 未熟でテクニックもなく、ただ気持ちのままにシャッターを押していたころの写真。

「ふうん。俺はこっちの方が好きだな、って言ったら怒られますかね」

 いたずらっ子のように舌を出し、ケイトは写真をもとに戻した。

「本当の彼はここにいるんですね」
「この場所わかりませんか?ここをぼくに見せたいって言っていたんです。だからもしかしたら、って」
「そうですねえ」

 もう一度写真に目を通しながらケイトは何か所か地名をあげた。

「雰囲気的にそんなところが候補、でしょうか」
「それってすぐに行けますか?」

 今すぐにでも発とうとする優希を抑えて、ケイトは「落ち着いて」と答えた。

「気持ちが急くのはわかりますが、さっきついたばかりなんですよ。一度落ち着いて食事もして一回休んで、明日準備をしっかりして行きましょう。Allyも行く気満々です」
「でも、これ以上ご迷惑は」
「迷惑じゃないって何度も言っていますよね?こちらの落ち度。優希に迷惑をかけているのはこちらサイドだって。だからAllyを上手に使ってやってください」
「でも」

 まだ続けようとする優希の唇に人差し指を当て、「シー」っとウインクした。

「急がば回れっていうでしょ。まずは食事にしましょう。ルームメイト達にも挨拶して」
「……わかりました」

 これ以上ごねて迷惑をかけるわけにもいかない。それにかなり疲れてもいた。ここまで一気に来てしまって興奮しているけど、体は休息を求めている。

「いい子ですね。じゃ、キッチンに行きましょうか」

 たおやかそうに見えて、あのAllyを大人の男に仕上げた腕前だ。優希なんかじゃ太刀打ちできないだろう。

 ケイトの後についていくと大きなテーブルには数人の男たちが集まっていて、みんなここの住人だという。

「それぞれ実力がある発芽前のアーティストたちなんですよ」

 優希が席に着くと、一斉に視線が集まった。