目を覚ますと強い消毒薬の匂いにつつまれていた。動かそうとした全身がものすごい痛みに襲われ、思わず(うめ)いてしまう。

 それを聞きつけたのか、明るい声が優希の名前を呼んだ。

「斎藤さん。目が覚めましたか?」
「……ここ、は」

 朦朧としたまま辺りを見渡すと、真っ白くて清潔な一室にいた。ベッドに寝そべった自分が、細いチューブに繋がれているのが視界に入る。

「斎藤さんわかりますか?」

 顔を覗き込んできた看護師が柔らかく笑みを浮かべながら声をかけてくるのに、うなずいて答える。ということは、病院のベッドにいるのか。記憶があいまいに途切れている。

「どこか痛いところはありますか?具合は?」
「大丈夫です……痛っ」

 体を起こそうとしてもままならず、ふたたび壊れそうな痛みが全身を貫く。

「動かなくて大丈夫です。今ドクター呼んできますからね」

 ほどなくして若いドクターが優希のもとへやってきた。不安を拭い去るためだろうか、あえて軽い口調で声をかけてくる。

「斎藤さーん、わかりますか?」
「はい、大丈夫です」
「体、見させてもらいますよ」

 ドクターはカーテンで仕切り二人だけの空間を作ると、体の外の傷だけでなく奥深く体内の傷までじっくりと診察した。さすがにお尻を突き出す形での内診に抵抗を示したが、恥ずかしいと思う暇もなく検められてしまった。