好き、たった2文字なのに言えない。言おうとしてもその単語は喉につっかえてうまく言えなくて苦しい。
もしかしたらこの感じ、空先輩は分かってないようで、分かってるのかな。空先輩は優しいからずっと私を優しく見て突き放さないようにしてくれて、私の好意だって気付いてるはずだ。
…気付いててほしい。
今、自分はどんな顔をしているんだろう、どんな態度なんだろう。誰も喋らない沈黙の中、暑さと心臓の音だけが大きくなっていく。
セミだって早く言えよと言わんばかりに鳴き始めた。
「先輩、」
『ん?』
続きを言えばそうやって、笑いかけてくれる事はなくなるのだろうか。
嫌だなすごく。私が避け始める前のあの関係にはもう戻らないのかな…。、
言いたい、早く言って楽になりたい。なのに言葉が出なくて。
『……泣かないで、』
気付けば目に涙が溜まって、振られると分かっててする告白はこんなにも堪らなく怖くて辛いだなんて知らなかった。ポロポロと落ちる涙を空先輩は拭ってくれなくて、ただ、私の手を握るだけだった。
どうして拭いてくれないの、どうして抱きしめてくれないの、こんなに好きなのになんで、ダメなんだろう。
前に愛犬が亡くなっちゃった時だって、止まらなかった涙もその貴方の手で拭って
『花、大丈夫、俺がいるよ』
って言ってくれたのに。
『煇と、何かあった…?』
求めていた言葉とは違う事で、空先輩を困らせていることは分かっている。分かってるけど…
「煇先輩っは、関係ないです…」
『じゃあどうして?』
「……」
そうやって猫みたいな甘い声で聞いてくるの、それは心配だからなの?
あぁもう、どうにでもなれ。
「先輩が好きだからっ…」
『…え?』
「空先輩が、好きだからっ…!!」
「なんで、わかんないんっ…ですか…っ」
先輩のばかばかばか
先輩は驚いた顔をしては悲しそうな顔をした。
『ごめん、花の気持ちには、答えられない…』
分かってた言葉なのに胸に突き刺さって、心臓がキュウッと握りつぶされた感じがする。
『花は妹みたいな感じなんだ、でも好きになってくれてありがとう』
痛くて悲しくて、苦しい。