『なにを最後にするの?』
1番今会いたい人の声がして、恐る恐る振り向いた。
「なんでっ、ここに…」
『花こそ、どうしてここにいるの?』
ハの字に眉を傾けた空先輩がこっちにきて
『泣いてる?』 とまた私の頭を撫でた。
何も言えずに目をキョロキョロとさせていたら
『そんなびっくりする?笑』
と私の好きな糸目の笑顔を向けた。私が座っている横の椅子に空先輩も座れば、先輩の匂いがして胸がトクンとした。
『ここにくる途中に花から連絡が来てて、そしたらなんか教室から泣いてる声がするなってびっくりしたんだけど…』
『話って、なに?』
肘をついて目も合わせない私を覗き込んでそう聞いた。
「あ、えっと…」
『顔赤いよ?大丈夫?』
空先輩が私の横髪を耳にかければほっぺに角ばった手の甲が触れて空先輩は自分のおでこと私の体温を比べた。
『…熱、はないかな…?』
先輩、私今絶対熱あります。スッと離されればジンジンと頬だけに熱が集中した。
そんな事されたら顔は赤くなる一方で
『ふふ、真っ赤っか笑かわいいね』
空先輩は本当にずるい、こんなの誰もが好きになってしまう…。私の反応をみて楽しんでるのかな?両手で私の頬を包めばうりうりと遊び始める。
心臓は空先輩に聞こえるんじゃないかってぐらいバクバク鳴っているのに、空先輩は全く気付く気配もしない。
このままだと、また伝えられなくて同じ事を繰り返すだけだ…そう思って私の顔で遊ぶ空先輩の手を止めた。
「先輩、やめてください…」
『あ、ごめんね、つい柔らかくて…笑』
パッと手を離してくれたのにまだ包まれている感覚があって泣きそうになる。
「……」『……』
2人だけの教室で、梅雨明けでもジワジワとぬるい空気が体を侵食する。
「今日、いい天気ですね、」
『そうだね』
「先輩、彼女…いたんですね。」
『うん、最近できたんだ』
「そう、ですか…」
『うん…』
『花ちゃんの話って、それ?』
違うよ、先輩貴方の事で話したいの。