だけどある日空に相談された。


『あのさ、煇…』

『なに?どうしたそんな深刻な顔して…』

『俺、もうわかんないや…』


何かに悩んで眠れなかったのだろうか。空の目の下にはクマができてきて虚ろな目をしていた。


珍しいな。空が悩むなんて。まぁ大体予想はついている。どっちかなんだろうな…


『……なに…?〇〇ちゃんの事?それとも、サラ?』

『うん…』

『はぁ……サラに告られでもしたわけ?』


『まぁそんなとこかな…』


クマができるまで悩むんだな、空は花ちゃんが好きなんだから迷うことなんてないはずなのに。


『サラに告られたとかラッキーじゃん、付き合いなよ』

『や、まぁそうなんだけど…』


サラはこの学校で美人だと有名な女の子で、俺たちともたまに遊びに行く程度に仲良くしている。花ちゃんに出会う前まではサラが普通に可愛いと思ってたんだけどなぁ。





『なににそんな悩んでるの?』

『いやぁ…なんか、さ…』






『サラとは付き合ってもいーかなって思うんだけど、どうしても頭に花が浮かぶんだよな〜…』






うーんと頭を抱えて唸る空。俺はそれを見て、自分の中の黒い何かが大きくなった気がした。



きっと前までの自分だったらこう言うんだろう、お前さサラじゃなくて、花ちゃんが好きなんじゃないの?って。




すごく腹が立った

空の花ちゃんに対するそのふわふわとした感情に。







俺はお前の横で笑ってるその子が好きでたまらないのに。でもその笑顔は悔しくも空のおかげで出来上がっていて、邪魔はしてはいけない、そう思ってずっと我慢していたのに。



花ちゃんが幸せそうにしていれば、それだけでいーやって思ってたのに。






空は悩み事があれば俺に打ち明けてくれて、なんでも俺の言う通りにするんだ。俺はそれを、利用してしまった。


空がそんな感じなら、俺もらっちゃってもいいよね?


握りしめていた手のひらには爪が食い込んでいたけど痛さは不思議と感じなかった。