ー煇sideー
黒髪をゆらゆら揺らしながら走って空の元へ行く花ちゃんを眺めて、また不安になる。花ちゃんはずるい
『…あんなにも追いかけたいって顔されたら、行かせるしかないじゃん…』
本当に行かせてもよかったのかと後悔する。
最近可愛い後輩と知り合えたと空から聞いた時は、正直びっくりした。
まぁ入学当初からモテていたし、お気に入りとかめんどくさそうだからとあまり作らない空なのにその子に関してはすごく大切にしてて、好きなのかなって思って聞いてみたけど
『んー妹って感じかなぁ、すごくピュアなんだ、可愛いよ』
ってニヤケが止まらないあのアホみたいな顔で言ってたっけ。
でも本人の口から聞く花ちゃんの話は誰が聞いても僕は花が好きですって言ってる感じがしてた。
本人は気付いてないんだろうな…どんな子なんだろうって俺自身も気になって、お昼ご飯を食べる約束をしてた空について行った。
そこにいたのはサラサラと揺れる黒髪ロングをした小さな女の子。空のタイプにしては珍しいなって思った。はじめまして、と髪を耳にかけて頭を下げる花ちゃんに何故か少しドキッとした。
シャツをまくってそこから覗く白くて細い腕に目がいく。
『この人が空だよ〜!いいやつだから仲良くしてあげて〜!』
「は、はい!よろしくお願いします!」
『よろしくね』
今日さ〜と自然に花ちゃんの横に座って話しかける空。チラッと花ちゃんを見れば髪をかけた耳から頬にかけて紅くなっていてなんか胸がチクッとした。
多分、いや、普通に一目惚れだった。
初めて俺を見る目も自然と赤くて薄くて小さい口なのに下唇だけがぷっくりとしたその口も染料でなにも侵されていないその髪も、空と話す度にワクワクさせてる花ちゃんも自分には新鮮でただ可愛くて仕方がなかった
自分のものにしたいと思った。
その日から空と花ちゃん3人で話すことが多くなった。相変わらず空は花ちゃんにスキンシップ激しめでその度に照れてる花ちゃんが可愛いな、でもムカつく俺も触れたいのに。と思う自分は相当惚れ込んでるのだろう。
3人でいるのに俺だけ1人、浮いてるなぁと感じる事もあったし、なんで俺いるんだろって何回か考えたこともある。