わざわざ私の家の近くまで原付で来てくれた先輩。

「お久しぶりです、先輩…!」

 笑っているかな、私…

「久しぶりだな。元気か?」

 他愛もない話。
 怖くて切り出せない本題…

 でも、言わなきゃ…

「…私、先輩が好きです…先輩、卒業しますけど…でも…付き合って、もらえませんか…?」

 私の悪い癖、好きな人の顔は照れて見られない。
 だから私は半分下を向いたまま、チラチラと先輩を見た。

「…カオリ、俺、引っ越すんだよ…」

 苦笑いの先輩。

「知ってます…!!でもいいんです!好きなんです、先輩…。私のこと、嫌いですか…?」

「嫌いじゃない…でも、良い奴見つけろ〜?」

 おどけてみせる先輩。

「…。」

 もう、遅かったよね…

「っ…先輩、いつか、また…!」

「元気でな…!」

 私の終わった恋。
 私は先輩と別れたあと、泣きながら家に帰った。


 卒業式。居なくなる先輩を思って泣いた。


 自分の卒業式ではふと、あのときの先輩を思い出した。


 そしてさらに何年か経って…

「あ…先輩…!!」

 インターネットで見つけた数年前の、ある演劇公演後の俳優さんたちのコメント。
 その中に、昔と変わらない雰囲気の先輩の写真とコメントがあった。

 結婚したかな…
 どこに住んでいるんだろう?
 今も元気かな…

 でももし会えたら一番伝えたいのは、

「先輩、ありがとうございました!」

 …かな…。