教室に着き、机にカバンを置くなどいつも通りの動作を繰り返していると少しずつあることが思い出されつつあった。
「おっはよー!瑚々。」
「あ、華鈴ちゃん、おはよう。」
ちゃんと笑えてたかな。でも良かった。香澄くんじゃなくて
『松森さん、おはよう。』
安心したのもつかの間、隣からは明るくて昨日のことをなんとも思ってないような香澄くんが話しかけてきていた。
「あ、お、おはよう。宮槻くん......」
やばいいいいい!こんなあからさまにおかしなへんじ!
「どしたの。瑚々。何かあった?」
まだ、ホームルームまで時間がある。昨日のこと、華鈴ちゃんに話してみよう。
「華鈴ちゃん!ちょっと!!きて!!」
「え!?ちょ、瑚々......!?」
少々、強引に逃げるような態度しちゃったけど、後で誤魔化しとけば大丈夫だよね。
「ねぇ、瑚々?どうしたの?」
気がつけば私は体育館に繋がる通路に来ていた。
「あのね、話したいことがあって......」
「うん。」
「実はね......」
それから私はゆっくりと昨日のことを話した。
華鈴ちゃんは、時々相槌を打ちながら私のペースで聞いてくれた。
「それで、さっき、話しかけられて戸惑ってしまった。と。」
「う、うん。」
「まず、瑚々、あなたは少し落ち着いて。今はホームルームが始まっちゃうとあれだから教室に戻ろ。で、今日はできるだけ宮槻と関わらない過ごし方をしてみて。」
「わ、わかった。」
今日は英語がなかったはずだからペアで学習することはなかったはず......。
いつも、香澄くんに話しかけられてる女子のように今日は過ごそうと決めた。

教室に戻ると同時にチャイムが鳴り、その30秒後くらいに担任の先生が入ってきた。
「今日のホームルームは虹中祭についてです。」
先生がそういった途端に教室がざわめき出した。
体育祭と文化祭どっちだろ!と話している声も聞こえてきた。
「さっき、あった朝の会議で、今年の虹中祭は......文化祭に決まりましたーー!」
先生のその一言でまた教室が騒がしくなった。
体育祭が良かったぁぁぁー。と悔やんでいる子もいれば、出し物について話を始めている子もいる。
「それで、今日は出し物のアンケートを取ります。周りの人と相談せずにあくまで、意見として書いてください。うるさくなったら、先生が勝手に決めます。」
そう言った途端にコソコソ話しているグループも静かに書き始めた。
そして、ホームルームはあっという間に終わり、先生が教室から出ていった。
1時間目の授業準備をしていると華鈴ちゃんが駆け寄ってきた。
「瑚々ーー!瑚々はなんてかいたー?」
アンケートのことかな......??
「私は、無難にカフェって書いたよ。」
「すごい!私もカフェって書いたよ!まぁ、コスプレってのもついてるけど♡」
以心伝心してるーー!って騒ぎながら1時間目の移動教室へと向かった。
それからの一日は毎日が早く過ぎていって、私が告白されてから2週間が経過した。
さすがにそろそろ返事待たせすぎだろうか。
でも、なんで、私なんだろう。というそもそも論に辿り着きつつあるから返事を考え始めた。