授業中はいつも通り......ではないけど、ちょっとおかしい香澄くんのままだけどあの紙については何も言わなかった。
みんなに聞かれるのが嫌な内容なのかな?
そう思うと少し怖いけど......。
香澄くんの名前を使ったいたずらでは無いことを必死に祈っていた。
香澄くんが何も話してくれないからモヤモヤは消えずに放課後を迎えた。
先輩には先生に呼ばれていると嘘をついたけど罪悪感でいっぱいになってしまった。
でも今は、香澄くんのところに行こう。
私はそう思って1階にある図書室へと向かった。
いつもなら勉強している生徒もいるけど、今日はいなかった。用のある香澄くんは当然いたけど。

「香澄くん」と言って近づくと、『瑚々ちゃん』と呼ばれた
『よかった......来てくれて。』
「だって呼んだの香澄くんじゃん。来るよ。呼ばれたら。それで、話したいことってな.
『君が好きだ』
話って何?と聞こうとした私の疑問は香澄くんがいちばん私に言わなそうな言葉でかき消された。
「えっ?すき?私を?香澄くんが?」
まさかそんなと思って香澄くんに聞くと林檎のように赤く染った頬をした香澄くんが目の前にいて、私に向けられている言葉なんだと理解した。
「えっと、友達として好きってことだよね?」
『そんなわけない!!きちんと君をっ......瑚々ちゃんを恋愛対象として言ってるんだよ!!?』
「れ、恋愛って......//」
私は照れたりするよりも先に、あの時意識させてしまっていたことを申し訳なく感じてしまった。
『ごめん。わからない?じゃ、じゃあ、もう1回言うね?』
そう香澄くんは言うと、深呼吸をして
『瑚々ちゃんが好き。俺と付き合ってください!!』
香澄くんは顔を真っ赤にしながら恋愛に疎いという肩書きがついてもおかしくない私にもわかるような言い方で言った。
「あ、あの......お付き合いって何をするお付き合いのこと?」
勘違いしていたら嫌だから確認するために私はそう聞いた。
『デートとかする方のお付き合い。』
香澄くんはあっさり答えた。
『あと、告白してお付き合い申し込むやつで何があるのw?』
と、苦笑しながらも
『返事、今すぐじゃなくてもいいから考えておいてくれる?』と優しく言ってくれた。
「うんっ!考えてみる。あ、じゃあ部活、戻るね。」
と言って私は図書室を出た。
私はその後部活に戻ったものの、体調が優れず早退させてもらうことにした。

ジリリリリリ......耳の上で目覚まし時計が振動しながら私の部屋に鳴り響く。
もう、朝......か。
私はそれをすぐに止めて、布団から起き上がった。
昨日のことがあったからか、質のいい睡眠をすることは出来なかった。
私だって、あの時は部活に戻ることを口実にあの場を去れたけど恋愛経験は皆無以下だと言えるレベルでしてこなかった。
自分から恋に落ちることもなかったし、誰かから告白されることも。
仮に病気のことを言ってまだ前の学校に通っていたら、皆私に気を使ってきていたはず。
そんな関係で私は友達を作りたくなかった。
生きてられればそれでいい。そう自分に言い聞かせて。
今日。どんな顔で香澄くんに会えばいいんだろう。
その時、部屋の外からお母さんの声が聞こえた。

「瑚々ーー?起きてるなら支度してご飯たべちゃってぇー」

そうだった。いくら学校まで徒歩10分で行けるからと言ってこんなことをして時間を過ごしていると遅刻してしまう。
私のお母さんは引っ越してから今までより朝早い仕事になったから私たち家族はそれに合わせるように早起きを心がけることにした。
部屋を出てすぐ、私にはあるものの香りが鼻をくすぐった。
この香りは......ハニーバタートースト!!!

1人心の中で飛び跳ねながら階段を下りると、キッチンにいるお父さんと目が合った。
「お父さん、おはよう!今日はハニーバタートーストだよね?」
『瑚々おはよう。今日は好きなものにしといたよ。 』
私が大好きなハニーバタートーストは親戚の中でも好みのとおりに焼けるのがお父さんと従兄弟のお兄ちゃんしかいない。
久しぶりに従兄弟のお兄ちゃんのも食べてみたいなぁ。
そんな、トーストのことを考えながらトーストを頬張っているとあっという間に目の前のお皿がからになった。
そろそろ出発の時間が近づいてきたので私は髪を結って家を出た。
ハニーバタートーストのおかげで昨日のことなんてすっかり頭には残っていなかった。