香澄side
あー。もう!ほんとあの子何したいんだよ!!
トイレに行く振りをして部屋から出てきたけど、あの子どんな気持ちで俺が見てるか絶対分からないだろうなぁ。
今、好きな子が自分の好意に気づかないで自分の部屋にいるってことだけで頭がどうにかなりそう......。
俺がどれだけ君のこと想っているかも知らないで。
理性かき乱しといて......。
本人が自分の可愛さ分かってないのが1番タチ悪いだろ。
俺の気持ちって教えた方がいいのだろうか。
自分の中で勝手に始まる葛藤が全てあの子によって生み出されたものなんだと考えると不思議になる。
"元気すぎる子より少し静かな子の方が好き"
"ショートヘアよりロングより短いセミロングが好き"
なにより、見ただけで健康に気を使ってそうな純粋な子が可愛くて仕方ない。
あの子は、好きだと思うポイントが全て詰まっている。
本人が自分の家にいてもなお、こんなことを考えてしまう俺が1番やばいのだと気づくのはまだ先。
香澄side fin

香澄くんがお手洗いから戻ってきてなにか考えているような顔をしながら場所に座ったので"香澄くん?"と名前を呼んでみた。
途端に我に返ったのか、『あっ!』と香澄くんが声を出す。
「大丈夫?」
そう聞いただけなのに首を何回も縦に振る香澄くん。
もっと心配になったけど、「ほんとに?」と聞く前に香澄くんが喋りだしてしまった。
『いい機会だから、連絡先交換しない?』
まだ、よく知らないけど、隣の子だからいっか。という気持ちで私は香澄くんと連絡先を交換した。
そのあと、お互い挨拶がわりのスタンプを送っておいた。
交換したあとも香澄くんの様子は部屋に戻ってきた時とさらさら変わらなかったけど、2人で学校のこととかお互いのことを話していると、買い出しの2人が帰ってきた。
その時に香澄くんが『今の会話、2人だけの秘密ね』と言われたので秘密にする理由を聞かないで約束をした。
そのあと、みんなで華鈴ちゃん達が買ってきてくれたお菓子を食べながら勉強をした。

それにしても、あの時の香澄くん、なんだったんだろう。
楽しかった勉強会が終わり家に帰る道を歩いていた時に鞄に入れていたスマホがメッセージを知らせる着信音を鳴らした。
誰からだろう。と思い確認すると、「KASUMI」と書かれたところに①とついていたのでタップして開くと、
『今日はありがとう。瑚々ちゃんのおかげで楽しく勉強が出来たよ。』というメッセージが届いていた。
すぐに返信を打とうと近くにあった公園のベンチに座った。
お家にお邪魔させてもらったから、お礼と「私も勉強教えてもらえて嬉しかった。」と送った。
すぐに既読がつき、香澄くんから新たなメッセージが送られてきた。
でも、そのメッセージは私には理由が上手く理解できないものだった。
『瑚々ちゃん、あのね、お願いがあるんだ。学校では今まで通り苗字呼びのままにしてくれないかな。』
さっき、自分から呼んで欲しいと言っていたのに??
なんでだろう。
でも、その本人がお願いしてきたんだし、なにか理由はあるんだよね。
私は了承のメッセージとスタンプだけを送り、理由は聞かないままスマホを閉じて帰路に戻った。