「香澄くん!見て!香澄くん!」

『ん?瑚々、何?......って、わっ!』

「つかまり立ちした~!」

『まって、そのまま......!今、動画をっ......。ああ~!やばい。可愛い。すごいの撮れた!』

「すごいね~瑚春!上手だったよ。」

目の前で撮ったものを再生して満足してる香澄くんを、つかまり立ちが終了して膝の上にいる天使と一緒に見つめる。

大学を卒業し香澄くんと結婚してから早3年。

私と香澄くんにはもうすぐ1歳になる愛娘の瑚春(こはる)がいる。

お母さんという使命感は思っていたより大きくて、まだ慣れないけど瑚春と香澄くんと一緒に過ごすこの毎日が変わらず幸せ。

毎日が幸せなのは私だけじゃなく、華鈴ちゃん達も同じようで......。

華鈴ちゃんは迅くんからの数多い告白に全てNoと答え、中学生から付き合っていた人と結婚して2歳の男の子とお腹に7ヶ月の赤ちゃんがいる。お腹の子は女の子って言ってた。

華鈴ちゃんのことを迅くんが好きだなんて全然気づかなかったけど......。

猛アプローチの末、Noという結果になった迅くんも、1年前に告白された同じ会社の人と付き合ってこの前婚約したんだとか。結婚するのも時間の問題みたい。

私も、大学を卒業して無事、看護師と病児保育士の資格をとれて瑚春がもう少し大きくなったら仕事を始める。

仕事中は私のお母さんとたまにお父さんが瑚春の面倒をみてくれるみたいだから安心して仕事ができる。

『瑚々......。』

「ん?」

瑚春をおもちゃの前まで連れてった香澄くんに呼ばれて近くにいくと

ちゅっと音をたてて唇を重ねてくる。

「ちょっと!瑚春がそこにいるのに!」

『いいじゃん。仲良いって証拠だよ。』

香澄くんは相変わらず毎日瑚春を寝かしつけるとベットの上で襲撃体制をとってくる。

私が、瑚春が起きる!と必死に拒むといじけたような顔するけどキスで許してくれる。

昼間に拒むと『夜にする?』と余裕の雰囲気で言われるから瑚春がみてないところでするようになった。傍から見たら バカップルってやつかな。カップルじゃなくて夫婦だけど。

結婚してから若干ドS?と感ずいてたけど若干ではなかった。

でも、どんな日々でも君がいてくれれば私は幸せになれる。


奇跡ってあると思う?

そう聞かれたら、私は ある って答える。

今こうやって大好きな人と愛しい存在と幸せに過ごせてるのは、あなたが奇跡を信じてあの日を待っててくれたから。

1人で立ってた暗闇を光が降り注ぐ明るい場所にしてくれたのは、あなただった。

これから、どんなに楽しかったり感動したりすることがあっても、

あなたが導いてくれたあの日の奇跡を私は絶対に忘れない。

元は私しか入れないくらいの箱のようなこの世界はあなたに明るくしてもらえた。

あなたに出会ったからあるこの幸せな毎日。

あなたが開いてくれた私の箱を今度はあなたと一緒に広げていく。

『瑚々!また、つかまり立ちしそうだよ!』

「え!まって!今行く!」

あなたと一緒ならまだまだ起こる気がするの。

これからもずっと幸せでいられるように願いを込めて......。

大切な人達と、そんな毎日を過ごして行きたい。

あと何回でも起こせる気がする"奇跡"を信じて。


・・・・箱の世界~愛が導いた奇跡~Fin・・・・