約束の日。

私は久しぶりに会うから普通のお出かけする服とは別の少しオシャレした服で向かった。

13時ちょっと過ぎについて、駅のなかを歩き南口に出ると、宮槻くんは時間よりも早いのにもう来ていた。

「宮槻くん!」

駆け寄りながら名前を呼ぶと、振り返って手を振ってくれた。

『久しぶり。瑚々ちゃん。』

「久しぶり。成人式の同窓会以来かな?ごめんね。待たせて」

『全然。午前中にこの近くで予定があったから早く着いちゃったんだ』

微笑みながら話してくれる宮槻くんは病院で初めて会ったときと同じ口調で安心した。

『ここだと、ゆっくり話せないから近くにあるカフェでお茶しながら話そう。パンケーキとパフェが美味しいお店があるんだ。』

「うん!そこ行こう!パンケーキもパフェも大好き!」

歩きながら話していると、宮槻くんの耳が赤いことに気づいた。

「宮槻くん、耳赤い。どうしたの?」

『どうしたもこうしたも、こんな可愛い服で隣歩かれたら、どんな男でもこうなるよ』

サラッと可愛いと言われ嬉しくなった。

「着いた。ここだよ。」

目の前にあるカフェは平日でも中が人でいっぱいのオシャレなカフェだった。

待たずに中に入れたのはきっと休日じゃなかったからだと思う。それくらい人気っぽいお店だった。

「何にする?」

宮槻くんはモテそうだから、こういう場所もこういうときの話し方も慣れてるな~。

「んー。このストロベリーアイスパフェも気になるけど、このふわふわパンケーキいちごクリームのせ。ってのも気になる......。」

思っていること全部言うと宮槻くんは店員さんを呼んだ。

『ストロベリーアイスパフェとふわふわパンケーキいちごクリームのせをひとつずつ』

「えっ。宮槻くんのは!?」

『大丈夫。俺も、これ気になってたから半分ちょうだい。』

と言って、コーヒーを注文した。

『瑚々ちゃんは?飲み物。何にする?』

「あっ。じゃあ、ストロベリーティーで。」

宮槻くんは慣れた様子で注文を店員さんに伝えた。

『瑚々ちゃん、いちご好きなの?』

「うん。いちご関係のお菓子とかも大好き!」

注文したものがほとんどいちごで早く食べてみたい。

『それで、聞きたいことがあるって言ってたよね。どうしたの?』

「あ、あのね。この写真なんだけど......」

タイムカプセルを掘り出した日のことを交えながら説明していくと『懐かしい』と言った宮槻くん。

『これは、瑚々ちゃんのお見舞いに行った日に撮った写真で、日にち書くっていうから下の名前で書いて。って言ったの。』

だから、手紙のなかにも下の名前だったんだ......。じゃなくて!

好きとか書いてあったこと......どう言おう。

色々迷っているうちに、いちごずくしのスイーツたちが運ばれてきた。

目の前に置かれた瞬間、幸せな気分になった。

『さ、食べよ。』

宮槻くんの一言で悩むのをやめて、スプーンを持っていちご王国に出かけた。

「あ~!美味しかったぁ。」

食べ終わって、カフェを出ると、なにやら宮槻くんがよそよそしい感じになった。

「どうしたの?」

『あのさ、もう一つ行きたい所があるんだけど、時間大丈夫?』

「うん。平気だけど......。」

私の返事を聞いて、宮槻くんと向かった場所は学校近くの公園だった。

「懐かしい~!ここでよく華鈴ちゃんとお喋りしたな~。」

遊具とか植物を見ていると、宮槻くんが突然、
『瑚々ちゃん。好きだ。』

「へ?」

『病院で見たときから。ずっと好きだった。』

「ホントに。ずっとだね。」

自分に起こる可能性すらも諦めていたのに......ずっと想ってくれてた人が私にもいた。

『俺と付き合ってください!』

緊張してるのか、顔と耳がほんのり赤い。

その時、タイムカプセルの手紙の文を思い出した。

好きですか?という内容。

きっとこのとき、私は宮槻くんに片思いしてたんだ。

宮槻くんも病院でって言ってるし、私たち、隠れ両想いだったんだ。

「こんな、私でよかったら、よろしくお願いします。」

宮槻くんにそう言った途端、ぎゅっと抱きしめてきた。

それが嬉しくて、私も抱きしめ返した。

この行動が思い出すきっかけの一つで、抱きしめあったり、好き。とお互いに言い合うことが初めてじゃないなんてこのときは知る由もなかった。