転校して早1週間。私は吹奏楽部に入部した。
私はトランペットを担当することになり、あと1週間もすれば今の1年生が新入部員として仮入部する期間になる。
それまでにある程度のことはできた方がいいとパートの先輩は、音の音域や楽器の手入れの仕方、吹くにあたっての必要なものや便利なものまで丁寧に教えてくれた。部活にも慣れ、だんだん吹けるようになったある日。
音楽室だけでなく学校中で練習していいことになった。
トランペットパートが主に使うのは3階の教室。
すごく今更だが虹丘中学校は、広くて大きい。
クラスが1学年に5つもある。
前の学校は、1学年3つあって多いくらいだったのに......。
そして、校舎は4階建て。
中学校でこんなに大きいなんてなかなかないと思ってた。
だからまだ学校では迷うことがある。
特別教室が多い1階、2,3,4階は5クラスある生徒が主に生活する教室と1階にはいりきらなかった特別教室がある。ちなみにこの学校にきて一番最初に入ったのは校長室。
校長先生と2年2組の先生に挨拶するためにお母さんと校長室を探した。
私はこの学校にきて、1番驚いたことが、校長室が4階にあるということだった。
会議室や生徒会室が4階にあるのに、職員室が3階ということも驚いた。
トランペットパートがよく使うというのが3階の校庭側にある2年生のプレイルームフロア。
ここは日光なども多くは当たらないし気温も激しく変化しないので練習には最適だった。
転校して2ヶ月経った頃には、毎日の練習で校庭を使って部活をしている人を見るのが私の密かな日課になっていた。
吹奏楽部に同じクラスの子は少なくて話すのも同じ音域の先輩としか話さない。
かりんちゃんはテニス部だから、部活中は別々だけど、プレイルームからテニスコートも見えるから、かりんちゃんを応援しながら練習することも多くあった。
最近の変わったことといえば、サッカー部の宮槻くんが部活中に手を振ってくれるようになったこと。
振り返すと笑顔で返してくれるから、かりんちゃんより宮槻くんを多く目で追ってしまうなんてことは秘密のこと。早いものでもうすぐ夏休み。
夏は吹奏楽部の集大成を発揮するコンクールがあるけれど私はまだ経験が浅いため、マネージャーのような仕事につくことになった。
本番の予行練習以外は自主参加のため、テスト勉強に当てることにした。
7月の上旬、私は宮槻くんにテスト勉強のお誘いをされた。
私はもちろんOKと返事をして、かりんちゃんも誘うことにしたことを宮槻くんに聞くと彼も友達を誘うつもりでいたみたいだから大丈夫と言われた。
どんな子なんだろ......宮槻くんのお友達は。期末テストが1週間後に近づいた土曜日、勉強会が開かれた。
場所は宮槻くんのお家。かりんちゃんと一緒に宮槻くんにもらった住所をスマホのマップに入れてお家に向かっている間、かりんちゃんとたくさんのお話をしながら歩いた。
「そういえば、宮槻の家ってお金持ちで豪邸ってウワサ聞いたことある......。」
「えぇー!そんな人に勉強誘われちゃったの!?
きちんと服とか整ってるかな.......」
かりんちゃんにそう言われた途端、服が汚れてたりしてないかとか急に始まったチェックタイム。
「まぁ、瑚々と宮槻って、イニシャル全く同じだもんね。」
そう、かりんちゃんから言われて宮槻くんの名前と私の名前を頭の中で並べた。
「ほ、ほんとだっ!」
「今気づいたの??案外運命の2人だったりしてね(笑)」
「そんなわけないよ。イニシャルが同じだけで運命なんて、童話の中じゃないんだから(笑)」
「意外とそうかもよぉー!うちの学校でイニシャルが全く瑚々と同じ人なんていないもん。宮槻も勉強を誘うくらいだし瑚々のこと嫌ってはないだろうし、逆に好いてるかも?」
「からかわないでよ。まだ宮槻くんのことよく知らないのに、そんなこと......」
口ではそう言ってみたけど、恋愛とかに興味が無い訳では無い。でもそういうことを考えると必ず、"病気"という言葉が頭を巡った。
宮槻 香澄くん......いったいどんな子なんだろう。
私は1人でそう考えていた。