香澄side
3日前の日曜日、俺が帰ってから数時間後の夜。瑚々の病状が悪化したと電話で瑚々のお母さんから連絡を受けた。
「急に血圧がおかしいくらい下がって呼吸が止まりかけた。」
その一言で俺の心臓が異常なくらいの速さで鳴り始め頭がおかしくなったような気がした。
「さっきまで、楽しそうに今日のこと話してたのに......。今は意識がなくて血圧もさっきよりは上がってきたけどまだ安全な状態ではない。」
電話の向こうで瑚々のお母さんが泣きながら教えてくれた。
今日は水曜日だけど、瑚々のことが心配で昨日も一昨日もほとんど集中できなかったから部活を休んで病院にいくことを決めた。
「宮槻っ!」
後ろから、女っぽいが苗字で呼ぶ声がして声の主ははっきりと分かるが一応振り返った。
『どしたの。佐藤』
声をかけてきたのは瑚々が一番信頼を寄せている佐藤 華鈴。
「今日ね、瑚々のお見舞い行ってくるの。伝えといたほうがいいこととかある?」
おそらく、佐藤の家には連絡がいってないのだろうと佐藤の言動から分かった。
こういう場合、言ったほうがいいよな。変に勘違いさせて混乱させるほうが危ない。
『今日。俺も行くんだ。』
「えっ?だって、宮槻は部活あるじゃん。」
『休む。』
「そんなことして大丈夫なの?宮槻レギュラーなんじゃ......。......まさか瑚々に何かあったの?」
直後に、ありえない。ごめんね、こんなこと聞いて。と言っている佐藤の手は若干震えていて......。
『瑚々の病状が悪化したらしい。今は、意識があるかわからない。』
悪化。という言葉を聞いた途端、佐藤の顔が一瞬引きつったように見えたが、すぐに
「そんな、瑚々に限って......。宮槻、残念ながらエイプリルフールはもう終わったよ?」と現実を受け入れたくない佐藤の言葉。
でも、体は理解しようとしているらしい。足が小鹿のように震えている。
『本当だ。佐藤、これは現実で、瑚々は3日前の日曜日に悪化した。と聞いているんだ』
「そんな......。だって私のところにはそんなこと......。」
聞いていないとでも言いたいのだろうが、上手く言葉が出てきていない。
『そのはずだ。あの時の瑚々のお母さん、そうとう焦ってたからそんな余裕なかったんだろう。連絡が行き渡らないのも当然だと思う。』
あくまで推測だが、当たっているはず。
「じゃあ、宮槻はなにしに行くの?」
何しに?こいつ、ふざけてるのか......?
『瑚々の意識が戻っているかもしれないし、戻っていなかったとしても傍にいたいんだよ』
若干、怒りが混ざってしまった口調で言ってしまったが佐藤には響いたみたいで。
「私も行く。瑚々に会いたい」
『その返事が聞けてよかった。』
心底ホッとした。これで行かないとか言ってたらブチ切れてたかも......。
今日は母親が休みで家にいるはずだから帰ったら佐藤を乗せて行こう。出来るだけ早く。