コンコン。

『あっ!きた!』

喜んだ様子は4つも上なんて考えられないくらい無邪気だった。

無邪気な新川くんの顔が見ていないのにとても嬉しそうで、親しい人が来てくれると不安な気持ちがなくなることを改めて実感していた。

『こ......こ。』

香澄くんに押し倒されたときに乱れたベットを綺麗に整えながら耳だけ傾けてると、香澄くんが驚いたような声で名前を呼んできた。

「なあに?」

『後ろ、むいて。』

後ろ......?

ドアと反対方向を向いていた私は言われたとおり後ろ。つまりドアのほうをみて絶句した。

後ろを向く前の私には予想もしてなかったことが起きていたから。

「......えっ?」

『久しぶり。松森さん。』

「なづき......せんせい?」

目の前にいたのは私のクラスに臨時で来ていた東條夏月先生だった。

『えっ?瑚々ちゃん、なづお兄ちゃんと知り合い?彼氏さんも?』

新川くんもビックリしてるけど、香澄くんもビックリしていた。

『驚いたよ。部屋に入ったら見覚えのある2人がいたから。元気だった?って、元気だったらここにはいないよな。あっ、魁吏、元気か?ってその顔は平気そうだな。松森さんと宮槻とは瑚々ちゃんたちの学校に1週間臨時で行っててそれで知り合いなんだ。』

相変わらず、爽やかな笑顔をしながら魁吏くんに私たちのことを説明している目の前の人は紛れもなく臨時の担任だった夏月先生。

私の好きだった人。

「元気です。私は今回検査で入院してるだけなので。」

『俺も、元気です。』

『良かった。最後の日も慌ててたから。また会えて。』

そうだよね。あの日は思いがけずに発作が起こって夏月先生に助けて貰ったんだし。

「あの時は、助けていただき、ありがとうございました。」

『大切な生徒が倒れてるのに放っておく教師なんかいないよ。僕は当たり前のことをしたまでだ。』

「え......、でも、抱きかかえてくれたって......」

『え......あ、まあ......あの時は、軽すぎてビビッたよ。』

苦笑いしてるけど、異性に抱きかかえられたことなんてお父さんしかいないよ......。

でも、香澄くんと初めてキスしたことも付き合い始めようと思えたのも夏月先生が手紙とボイスメッセージで勇気をくれたからだった。

『2人が一緒にいるってことは......』

夏月先生が少しニヤつきながら聞いてきたので香澄くんより先に答えた。

「はい。私達、付き合ってるんです。」

それを聞いた香澄くんは驚きながらも後ろからギュッと抱きしめてくれた。

『よかった。松森さんが辛い思いしてなくて。』

ニコっと笑った顔は私が恋してた夏月先生の笑顔だった。

でも、わたしがときめくのはもう一人しかいない。

そう思って、バックハグしている香澄くんをみるとニコッと笑って

『なに?キスしてほしいの?』とこんな人前であってはならないことをサラッと言うので「何いってんの!?」と少し怒ってみた。