香澄くんは、まだ、こんなに・・・嘘をついていた私のこと......。

そう思って下を向いていた顔を香澄くんのほうに向けた。

でも、無理だった。

香澄くんを見た途端、我慢していた苦しみと悲しみが溢れ出して、涙が......。

「っ......。だからね、もう香澄くんが......好きっ......て言ってくれ......た私じゃ......

『もう黙って』

その言葉と同時に口に柔らかいものが触れた。

最後まで言いたかった言葉は香澄くんによってかき消された。

香澄くんの唇によって......。

『あのね、君が何を言いたいのか分かりきってはいないけど俺は今でも君のことが好きだよ』

離れた口から告げられた言葉と今自分に何が起こったのか分からなくてフリーズしていると、目の前で手を上下に振られた。

『あっ生きてた。ごめんね。こんなことして』

『こんなこと......って』

『あっ、えっと今僕が君にしたこと分かるよね?キスしたの。分かる?』

............えっ  んっ?

「き......きすって......。」

『うん。あまりにも酷いこと言われたから口塞ごうかと......』

さらっとファーストキス奪われたような......。

『......今は発作おこってないでしょ?だから耳聞こえるよね?』

耳に手を添えた仕草をしながらきいてきたことよりまだ、現実を理解しきっていなくて......。

「うん。っていうか、ファーストキスだったんだけど!」

少し怒ってるって思わせたほうがと思ったけどその作戦はすぐに崩れ落ちた。

『えっ?俺もだけど......?』

へ......?だって香澄くんモテるんじゃ......

普通なら、お互いが好き同士でお互いにファーストキスとか喜ぶのだろうけど、私の心は驚きの気持ちで支配されていた。

『俺ねファーストキスは自分から好きになった子とって決めてたの。だから今まで告られたことはあるけど、その子達のこと俺は好きじゃなかったから付き合ったりはしなかった。』

「だからって、......!!!」

『ふふっ。良かった。元気になった。』

「えっ......?」

なん......で笑ってるの?

『さっき言った通り、恋愛経験0なのね。俺。だから好きな子の慰め方分かんなくて。なんだっけ......あっそうだ。
確か、病気なこと隠してたから俺が好きだった君じゃない。だっけ?』

「違うの......?」

目の前で、はぁ......とため息をついて私のいるベットに座った香澄くんは本気そうな顔をしていた。

『今から言うことよくきいてね......』

『俺は、どんな瑚々ちゃんでも今も好きなの。』

「えっと、そ、それは現在進行形ってやつですか......?」

『うん。そう』

英語の授業でならった言葉。ing をつけて使う現在進行形。始まってから終わるまでの間って意味だった気がする。

あまりにもすぐ答えが返ってきたので自分が何を言われているのか全く理解が追いつかない。

『すごく、好き。君のことこんなに大切に思ってるの分からない?』

真っ直ぐ嬉しいことを言ってくれてるはずなのに......。

なんでだろ......。素直に嬉しいって思えない。