ガチャっと開かれたドアから入ってきたのは華鈴ちゃんと香澄くんだった。
「瑚々、大丈夫......ってその顔じゃあ大丈夫そうだね。あっ、それ先生からの手紙?受け取ったんだ。良かった。」
「えと......なんで2人はここにいるの?」
色々なことが重なりすぎてパニックになりそう。
「瑚々が倒れて、動かなくなっちゃったから騒ぎにならないうちに皆を落ち着かせようとしたら宮槻が先生のこと呼びに行ってくれたの。ね?」
そう華鈴ちゃんに言われて今まで何一つ口を開かなかった香澄くんが口を開いた。
『なんか、ただのことじゃないって思って......』
「で、瑚々早退しちゃったからお見舞いに行くっていったら着いていきたいっていうから一緒に......。」
「二人ともありがとう。心配してくれて......」
「夏月先生ね、宮槻の言葉聞いて、血相を変えて教室に飛び込んできたの。
瑚々のこと抱きかかえて、泣く子供に大丈夫って囁いてる親みたいな顔でゆっくり、慎重に保健室つれてっていったんだよ。」
まさか、好意を抱いていた人に意識のないうちに抱きかかえられてしまうなんて。
その時意識がなかったのを・・・その時発作が起こったことをこれほどまでに後悔したことはないくらい驚きより、ショックが大きかった。
皆に病気のこと言わないでくれた。夏月先生には感謝してもしきれないくらいの想いが込み上げた。
「ん、じゃあ私は帰るね。瑚々の元気になった顔見れたし、プリントとかはお母さんに渡しといたから」
『あっじゃあ俺も......』
あっ......。
っつ。言わ......なきゃ。
「あの、2人共、待って。
「どうしたの瑚々。」
帰ることを引き止めた私は緊張と不安で心臓の音がこれでもかというくらい頭に響いていて。
でも、もう言わなきゃ。
「あの、大事な......話が......あるの。」
途切れ途切れで喋る私を見て2人はベットに近づいてくれて華鈴ちゃんは手を握ってくれた。
「2人に話さなきゃいけないと思ってたことがあるの。聞いてくれる?」
「あ......うん」
良かった。先生にもさっき勇気もらったから言える。今なら。
「私が今日倒れたのは、多分というか。理由がハッキリとしていてね。......わたし、病気なの」
『へ......?びょうきって......』
声を出したのは香澄くんで、隣にいた華鈴ちゃんは・・・・何も感情が湧き出てこないような・・・。考えていることが分からなかった。
「うん。多分聞いた事ないと思うんだけど、感覚神経失感症っていう病気」
2人は、あの時と同じ・・夏月先生に話したときと同じ。聞いた事無いって顔をしていた。
『まって、調べる......』
「調べても出てこないと思うよ。珍しい病気なの。」
どうしても、華鈴ちゃんは顔を上げてくれない。私と目を合わせてはくれなかった。
病気の症状、酷くなったときに起こりうること、完治する可能性。
全部話した。もう嘘をついているのが辛くなったから。
話し終わるまで香澄くんは何も話さずにただ、どこか辛そうな目を部屋の床に落としていた。話し終わって「ごめんね。隠してて」とだけ追加で伝えると、
『それ、いつから......?』
少し震えた声で聞いてきたのは、いつもとは違うかなり動揺した香澄くんだった。
「転校して虹丘中に来たときには、もう......。なってた。かな。」
その言葉を聞いて、華鈴ちゃんは踵を返し、部屋から出て行った。
......。今の私には、友達を辞めないで。という資格は無いんだ......。
あっやばい......なんか涙出てきた......。
『瑚々ちゃん......。』
私の名前を呼んだ香澄くんの声は、これでもかと言うくらい弱弱しくて。
もう、香澄くんも......、クラスの皆とも......。
あれ......。なんで、こんなこと思ってるんだろ。
お友達(仮)なのに。