ん。あれ......?
ここ、保健室じゃない。あ......、そっか。私、体調崩して......。
あと、2日だったのに・・明日で最後になっちゃう。
体が普通じゃない自分が情けなくて、なんだか涙が出てきた。
なんとか、目から零さないように上を向いて嗚咽を漏らしながら泣いていた時、お母さんが部屋に入ってきた。泣いてたから、お母さんが「苦しいの!?」とか焦ってたけど「大丈夫だよ」と言ってゼリーを食べた後薬を飲んで、ラスト2日に迫った1日に幕を下ろした。
次の日の朝。今日で、先生が来なくなっちゃう。と思うと学校へ行く足取りが重く感じる。
でも1週間後には終業式で冬休みが始まる。
今日の放課後、伝えるんだ。先生に。笑顔でさよならしよう。
学校へ着くと華鈴ちゃんが目をキラキラさせて近寄ってきた。
「あのね、夏月先生今日で最後だから後ろの黒板にメッセージ描こうってことになったの」
「あっじゃあ私も描く!描いてもいい!?」
「もちろん!ビックリさせよ!さ、じゃあ急ごっか。先生来ちゃう!」
急いでバックの中の物を机にしまって後ろの黒板に手を伸ばした。

その時、感じたことの無い痛みが首から頭にかけてを襲った。

っつ・・・。
立っていられなくなって、チョークと一緒に床に倒れてそのまま私は周りが分からなくなった。
周りが......暗い。ここ、どこ?寒い......。誰か......助けて......。

目を覚ましたところは保健室ではなく家のベットだった。
あれ......?明るい......。何が起こったか分からずにしどろもどろしているとちょうど部屋にお母さんが入ってきた。
「瑚々っ。もう大丈夫なの!?」
「お母さん......なんで私ここにいるの......?」
「あなたの担任の東條先生から呼び出されたの。倒れたって......。」
慌てて時間を確認したけど夜の7時をまわっていて、もう先生に会えないことを確信した。
「っつ......ふっ......なづきせんせい......」
次から次へと目から涙が零れ落ちてくる。
悔しい......。
その様子を見ていたお母さんが私のスマホを探して「ちょっと借りるわね」と言いながらいじって「ねぇ......。」と言ってきた。
「その、東條先生今日で来なくなっちゃうのよね......?」
現実を突きつけられてまた、悲しくなった。
「瑚々を迎えに行った時ね、こんなものもらったのよ。」
そう言ったお母さんから渡されたのは私のスマホと1つの手紙。
それ、あなたにって東條先生からの手紙とこれには......といって私のスマホの画面を明るくした。そこには、3分ほどの録音されたメッセージが記録されていた。
「電話で呼び出されたときに、瑚々の病気のことは知っています。って言われて、近くにあなたのスマホがあればもってきてほしいってお願いされたの。」
「えっ......?」
「もちろん驚いたわ。でも伝えたいことがあるって言ってたから・・ごめんね勝手なことして」
ロックかけてなかったことにとても安心したし嬉しくなった。
「学校に行ってからお母さんのスマホとそのときだけ連絡先交換して送られてきたのがこのメッセージ。
「「私は医者じゃないから心配してそばにいることしかできなかったので、せめてその録音したのを瑚々さんのスマホに送っておいてもらえませんか」」って言われたの。
その言葉を聞いて、きっと瑚々にとって大切な先生だったんだなって思ったの。
いい?保存した?もうあの先生から送られてきたのは消すわよ?」
優しい口調で語られた全てが嬉しくて仕方なかった。
お母さんの言葉に返事をして、私の心にあった不安や寂しさ、悔しい気持ちは消えていくのを感じた。
イヤホンを取り出してメッセージから聴くことにした。



「「あっ。あー。これ録られてるのか?......まあいいか。」」  
先生らしいところも録音されてておもわず笑っちゃった。 

 「「松森さん、聞こえてますか?これを聞いてるって事は元気になったって思っていいってことだね。良かった。さすがに焦りました。 
 俺は、松森さんの病気を知っていたので2つの方法でメッセージを残そうと思います。
2週間という長いようで短い期間を一緒の教室で過ごしてきたけど毎日が楽しくて気づいたら今日、最終日になっていました。(笑)
松森さんから話したいことがあるって言われて先生は君の病気を知りました。馴染みの無い病名で、きっと言ってくれるのに勇気をつかってくれたんだと思う。
ありがとう。話してくれて。
そして、2週間本当にありがとう。これからも機会があったら学校に行くかもなので見かけたら話しかけてくれると嬉しいです。じゃあ、また。バイバイ。」」    
先生の気遣いが嬉しかった。
嬉しくて仕方ない。途中から泣いたまま聞いてたらしくほっぺが濡れていた。
伝えたかった気持ち、先生分かってる。絶対。
でも、もう大丈夫。気づいたから。私が、ホントに好きなのは......。
私を、暗闇から連れ出してくれた・・・君。
ふふ。っと笑ってイヤホンを取るとお母さんがニコッと笑って「それと......」と言いながら立ち上がった。
お母さんの言葉に耳を傾けていたら予想もしていなかったことをお母さんが口にした。
「ホントはどうしようか迷ったんだけど、瑚々、今元気......よね?」
「......? うん。だいぶ・・というか、すっかり元気だよ」
その返事を聞いたお母さんが微笑み、ガチャっと部屋の扉を開けた。
「あなたにお客さんが来てるの。」