あれ・・・?箸が、ない。今日は半年に一度のお弁当日・・なのに・・・・。
「瑚々っ!一緒に食べよ!」
「華鈴ちゃん・・」
「どしたの。瑚々。何があったら可愛い顔がそんな落ち込んだ顔になるの・・?」
「は、箸忘れちゃって」
「なんだ。良かった重大なことじゃなくて。だったら借りに行こう。職員室でお弁当の日だけ貸し出してるから」
「えっ?ほんと?」
「うん。私も1年のとき忘れちゃって借りたことあるよ」
安心した。お母さんが今日は好きなもの入れたって言ってたからお弁当が楽しみだった。
「夏月先生いるはずだから、呼べば言えるでしょ?私も行くから。」
「ありがとう。」
「じゃあ、早く行こう。時間なくなっちゃう。」
華鈴ちゃんと早足で職員室へと向かった。
職員室が見えてきたとき、予想もしてないことが起こった。「あの、すみません。ここの生徒さんですよね?」
後ろから声を掛けてきたその人は、いかにも清楚という言葉が似合う二十歳くらいの女性だった。
「そうですけど。」
「よかった~!職員室ってどこにありますか?」
「あっ、えと私達も今から行くのでついて来てもらって良いですか?」
「ありがとう!そうしてくれると助かるっ!」
とても美人なその人は安心したような表情をしていた。
微笑んだその人が夏月先生に似ていたなんて思いたくなかったけど......。
「ここです。」
「ありがとう。じゃあ先に用済ませちゃっていいよ?」「あ、はい。」
失礼します。と言って入ったけど何回来ても、すごく広いな。職員室。夏月先生に用件を伝えて箸を借りることができたからすごく安心した。
「あれ......?先生お昼ご飯は?」
何も持ってないから聞いてしまった。
『ああ、忘れちゃって。今からコンビニに走ろうかと。』「あっ、じゃあ先に食べてても良いですか?」
『うん。学級委員に伝えてくれると助かる』
「はい。分かりました」
『ありがとう。すぐ行くから』
そう言って職員室を出て行こうとした夏月先生が入り口で『は・・?』と声をあげた。

「あっ!なづくん。良かった。会えて」
『お前、なんでここに......』
用が済んだ私は職員室をあとにしようと夏月先生をよけて出ようとした。次の会話を聞くまでは・・・。
「なんでって、なづくんが家にお弁当忘れてたから届けにきた」
『マジで!? はぁ~良かった。ありがとう。しづ。』
えっ?まって今なんて・・・・。
聞かなかったことにして立ち去りたかったけど足が上手く動かない。
「ううん。なづくん困ってるかもって思ったし今日大学、建設記念日で休みだったから」
その女性は私にとってのとどめを刺すようなことを口にして先生にお弁当を渡して立ち去っていった。
「瑚......々、落ち着いて、教室、行こう。大丈夫。あとで私が聞いとく。」
華鈴ちゃんが優しくそう言ってくれてなかったら、あの場を立ち去ることなんてできなかった。だって、あの時の先生、すごく笑ってた。
教室に戻って華鈴ちゃんとお弁当を食べたけど、好きなおかずの味もよく分からなかった。
きっとこれは発作じゃない。
心が動揺を隠し切れずにいるんだ。
あんなことがあったから、午後の授業は受けられそうも無くて私は保健室にいた。
5時間目、先生の道徳だったけど、今先生の顔は見たくない。だんだん、さっきのことを思い出してきちゃって私は自分を抑えようと眠りに着いた。

次に目を開けたのは眠ってから1時間たった頃だった。もう5時間目は終わっていたので私は教室に戻ろうと保健の先生に伝え教室へ戻った。正直、もう家に帰りたい気分だけど。教室に戻ってすぐ、華鈴ちゃんが近くに来てくれた。「瑚々、もう大丈夫。あの人彼女じゃない!」
「えっ......?」
彼女じゃない......?だって2人共すっごく笑ってたし、それに、なづくんって......。しづ......っ。って。
「瑚々が保健室行ってから、先生に探りいれたの。それでね、あの人は先生の6つ下の妹!」
「いもうとさん......。」
「そう。あの女性の名前は、東條 紫月さん(とうじょう しづき)。先生の6つ下だけど婚約者がいる大学生って先生言ってた......」
その言葉を聞いて、悩んでいたこと全部無くなって体が軽くなった気がした。
「これで、彼女かもしれない問題は解決!後残り少ない夏月先生と過ごせる時間を安心して過ごせるね。」
「うん。ありがとう聞いてくれて」
「いえいえ、可愛い瑚々の為なら、お礼なんていらないよ」華鈴ちゃんもここまでしてくれるんだから、あとは私が勇気を出して伝えなきゃ
「華鈴ちゃん、私頑張る。」
「うん。あと3日しかないもんね。頑張れ!」

夏月先生と過ごせる日がカウントダウンされ始まった次の日の朝。私はいつもと変わらないように過ごしているように思われているが毎日伝え方について悩んでしかいなかった。『松森さん......瑚々ちゃん。』
「へ?」
『ボーッとしてたの??次、君の番。ここの英文』
ああ、そうだった。今ペア音読の時間だった。
「うん。ありがとう」
だんだん頭が狂いそうなほど夏月先生しか考えられなくなりそう......だけど、授業はちゃんと受けよう。
悩んでたって仕方ない。今の自分の気持ちを伝えよう。
英語の授業や苦手な体育の授業を一生懸命取り組んでとにかく全力でその日の授業を終えた。
あと2日。そう考えて家のベットで意識を手放した。
次の日の朝になると、なぜか具合が悪かった。身体が何か自分より重いものによってベットにおしつけられているような感覚で激しい倦怠感と熱も微熱だけどあるみたい私は人より体調には気をつけなければいけない。
はやくお母さんに言わなきゃ。そう思っていても、身体が素直に動くわけも無く・・・・無事に階段を下りてお母さんに話すことが出来たのは起きてから30分が経ったときだった。
お母さんに言ってからの物事の進むスピードは付いていけなくなるくらい速くて。
テレビ電話で担当医であるほし先生の診察を受けて、熱が下がるまで睡眠をとった。