『そっか。でも良かったね。言いたいと思った人に言えたのは進歩だと思うよ。』
定期通院の日に言おうと決めていたことを全部話して星城先生から言われた言葉。
『進歩できたってことは、治療も切り替えて治していく方向でいいのかな?』
今までは発作を抑制することを目的としていたけど......もう私の中に迷いというものはなく、先生の目をみて「はい」と返事をした。
今日は5回目の定期通院で前から受けていた全部の検査結果が分かる日。
『検査結果だけど、特に異常は無かったよ。頑張って薬飲んでるからかもね。』
その言葉を聞いてホッとした。異常があったら入院とかになっちゃうと聞いていたから。
でも、検査に異常が見られなかったからって治ったわけじゃない。そう思って学校で発作みたいなものを感じたことをほし先生に説明した。
『なるほどね。聴覚の部分に発作がでた......か。』
「しっ、しばらくしたら治ったんですけど怖くなって......。」
今でも夏月先生が話していることが聞こえなかったあのときを思い出すと不安になる。
『大丈夫。発作は確かに何時ごろ起こるとは決まってないけど抑制することはできる。 だから、今瑚々ちゃんは僕の声が聞こえるし顔も見えてる、この診察室のいかにも病院っぽい消毒液の匂いだって感じられてるでしょ?』
言われたことが全部分かることに対しての安心感が不安を消し去っていった。
『治す方向に切り替えるからってこれまでの事が特別変わるってわけではないから、普通よりも体調管理に気をつけてストレスだったりを溜め込みすぎないこと......ね。』
「はい。」
『ん。じゃあ今日の診察は終わり。薬もらってかえってね』「ありがとうございました。失礼します。」
先生に挨拶をしていつも通り薬を受け取りにいった。

香澄side 

瑚々ちゃん、、何か最近元気なさそう。隣でノートと黒板を交互に見ている顔は傍から見たら普通通りに見えるだろう。でも、なんか表情が曇っている気が・・・・いや、もしかしたら本当に勘違いの考え過ぎかもしれない。1度告白して断られてはいるが、その後も好きでい続ける許可はもらった。今度は完全に振り向かせて告白に「はい」と言わせる......!
「「じゃあ、ここを宮槻読んでくれ」」
突然と先生から名前を呼ばれて今が授業中だと思い出す。『えっ、あ。えっと......』
やばい、聞いてなかった。違うことに集中しすぎた。
『すみません。どこか分かりません。』
「「珍しいな、おまえが話を聞いてないなんて・・・。まあ今日はいい。松森、宮槻に教えてやってくれ。」」
はい。という細いのに聞く側を和ませるような声で俺に読むべき場所を教えてくる俺の天使。もうこのまま1年間席替えなんてしなくていいと思う。席替えなんてしたら確実に連続で隣の席になるなんてあり得ない。
「宮槻くん、大丈夫......?」
可愛い小動物のような顔でこちらを覗くので『何が?』と答えようとしたら「「宮槻、、、早く読んでくれ。」」若干怒り気味の声が黒板付近から聞こえてきたので、我に返り指定されたとこを読んだ。
いつもはあんまり当てられないのに......。と授業が終わってから思うと、隣から少し賑やかな声が聞こえてきた。
そっか、今日弁当日だった。早く準備しよう。
気づけば昼ごはん、そして次に気づいた時は清掃の時間なんてことが最近増えた。
きっと理由は、隣の天然小動物が可愛すぎるから。ノートに黒板の内容をまとめているところもペアで英語の音読練習をしているところも。何してても俺を和ませてくれる。もう後戻りはできない気がする。こんなに心をかき乱されて心臓はあり得ないほど狂いの音をあげていて。
後戻りできないほど彼女に心を奪われた。愛しすぎる存在に今日も微笑み続ける。
香澄sideFin