人は誰でも、自分の世界という箱を持っている。
どんなに仲が良くたって箱の中身を全部知ることは難しい。

でも、私の世界には私の箱を開いてくれる人すらいなくて、そうなりたくてなっていたわけではないのに、私の箱はいつも、"暗い暗い闇の中"にぽつんとあったんだ。
"楽しい"って感じてみたい。いつも私はそう願ってた。
でもそう願う度に私の箱は人が入ることの出来る面積より小さくなっていって、ついには、私1人だけしか入っていられないくらいの小さな暗い箱になっていた。
どんどん、ネガティブなことしか考えられなくなるような場所に1人にされて。
"友達と楽しい学校生活を送る"小学校の卒業式で決めた中学校での目標。
キラキラしていた目標も忘れてしまうくらい寂しかった。

"私の箱に光を注いでくれるあなたに会うまでは......"

1年前、
"楽しい学校生活になるといいな" そう考えながら臨んだ中学校の入学式。
この頃の私は、まんがの世界で見るような学校生活を夢見てた。
中学校の生活にも馴染んできた5月のある日。
私は学校生活には慣れたものの人見知りのせいか、まだ仲のいい友達が出来ずにいた。
だから、休み時間は好きな小説のヒロインなどを二次創作でお絵描きして孤独感を無くしていた。でも、......
「「こいつ男子の絵描いてるぞ!気持ちわりー!」」
たまたま、ヒーローの絵を描いているところを後ろから男子に見られ、とっさにその場から私は走り去った。
その言葉があって以来、中学校で叶えようと思った夢を持つのも、好きだった絵を描くのも、楽しみにしていた学校生活も、......やめた。

家から1歩も出ないで1人で過ごす毎日。
学校に行かなくなってからネットの教材等で学習するのが普通になっていた。
"絵。描いてみようかな"
ずっと塞ぎ込んでいた思いをスケッチブックにぶつけようと、手に取る。
その瞬間、学校で言われた言葉が脳裏に浮かんだ。

! ッッ......ウッッッ......!
いきなり、呼吸が出来なくなるような痛みが体を襲った。
その後すぐ、病院に行ったけど着いた頃には痛みは治まっていた。
それからもスケッチブックを手に取ると、同じようなことが起こるようになった。
両親は原因を明らかにしようと、様々な病院へ私を連れて行って私は色々な検査を受けた。
「「感覚神経失陥症 という、とても珍しい病気だと思われます。」」
両親も私も聞いたことの無い病名で説明されてもすぐにはわからなかった。
発症原因としては、ひどいストレスによる脳神経のバグ。まぁ麻痺して痛みを意図せず起こすものなんだという。
学校生活でのことを話したら、それが原因の可能性が高いと言われた。学校に行くことをやめたけど、まだ転校はしていなくて、新しい学校が見つかってから転校届けを出すことにしていた。
家で過ごすようになってから勉強はネット教材と、少し離れたところにある塾に通ってしていた。
どうせ転校すれば友達とも別れるんだからと思って塾でも友達を作らずに過ごしていた。

"病気の私に構う人なんていないんだから"
そう自分に言い聞かせて。
言い聞かせ続けて孤独をいうことを忘れさせるために。
寂しいなんて感情抱かないように。

学校に行かなくなって半年。
家族で話し合いを重ねてやっと転校先が決まった。

「「虹丘中学校。この学校で新しい生活を始めよう」」
お父さんはそう言っていたけど。

新しい生活と言っても、場所が変わるだけ。



病気の私に、この世界を楽しんで生きる資格なんてないんだから。